開きにくい鍵をそのまま使い続けていたら困ったことに

私たち一家が住むアパートの玄関にはシリンダー錠が二つついている。これはよくあるパターンだと思うが、ちょっと変わっているのが、上下で鍵の種類が違うということだ。同じ種類の鍵二つと違う種類の鍵二つでは、防犯効果は変わってくるのだろうか…。その真相はともかく、一つのドアで鍵を二つ持たなくてはならないというのが面倒で、私は殆ど下の鍵しか使わなくなっていた。上の鍵はダミーのようなものである。
 
しばらくの間はそれでよかったのだけど、隣人が引っ越してきてからというもの事情が変わった。そこは夫婦で住んでいるのだが、ちょっと様子がおかしいのだ。隣に住んでいて同じ時間帯に出勤しているようなのに、玄関前で鉢合わせたことが一度もない。たまに偶然会うとこそこそと隠れるようにして逃げてしまう。かと思えば車を我が家の窓にピタリとつけて、どうやらウチの中をのぞき見しているようだし。正直気味が悪いのだ。

そういうわけで今まで使っていなかった上の鍵も、念のため使用することにした。ところがしばらく使っていなかった時期があったせいか、上の鍵は開きにくくなっていた。まあ、仕方ないかなんて思っていたのだが、開きにくい鍵をそのまま使い続けていたら困ったことになってしまった。何と鍵が刺さったまま、引っこ抜けなくなってしまったのだ。ガチャガチャやっていると、隣の家からうちを伺う様子の気配を感じた。気味が悪くなった私は、大家さんに電話し、事の次第を説明した。もちろん隣の薄気味悪さについても訴えた。そして鍵屋さんにきてもらい、カギを抜いてメンテナンスしてもらったのである。

それからしばらくして、気味の悪い隣人は引っ越して行った。大家さんが何か働きかけてくれたのだろうか、とにかく我が家に平穏無事な日々が戻ったのである。ただ、やはり上の鍵は使い続けることにしている。もうあんな目に合うのは、こりごりだ。